【資格集】グローバル規格で経営センスを磨く『ISO審査員』

ISO審査員

本記事では国際規格の専門知識と各業界の深い知見を備えた経営の専門家『ISO審査員』資格の活躍事例や取得の仕方について解説しています

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ISO審査員とは

ISO審査員は、グローバルなマネジメント規格に関する専門知識と品質や環境、食品や航空など様々な業界の深い専門知識を持って経営コンサルティング(あるいは審査)を行うグローバルな資格です。


ISOに関わる業務には、日々のマネジメントシステムの運営、維持、管理に加え、監査業務対応があります。マネジメントシステムがISO規格の要求事項に適合しているか、運営管理などが作成したマニュアル通りに実行されている等を自社内でチェックするのが内部監査であり、資格を有する審査員として企業を審査するのが外部審査です。内部監査には特別な資格は必要なく、社内規定において選出されます。外部審査には審査員資格があり、ランク分けされます。

主にISO審査機関や自営業でのコンサルタントなど、審査実施側が主に取得するものですが、審査機関やコンサルタントに限らず、事業会社の社員も取得できます。働き方は、事業会社内でISOの知識を活かし、社内のEMSの継続、維持に関わる業務につくかあるいは、審査を行う側、または経営コンサルタントのような外部からの支援者としての活用ケースが挙げられます。

そもそもISOとは

ISOとは国際標準化機構(International Organization for Standardization)という国際機関であり、様々な世界の標準(スタンダード)を定めています。日本を含め、世界中の国が加盟し、策定された様々な国際規格の中で、我々はモノづくりやらビジネスやらを展開しています。その数は20,000を超え、現在も変革する社会要請に応じて規格の数は増え続けています。

本記事では環境マネジメントシステムであるISO14001とその審査員資格であるISO14001審査員についてフォーカスします。関連するものとしてCSRやエネルギーマネジメントシステム、最近話題となっている人的資本などにも少し触れていきます。まずは環境マネジメントシステムについて見ていきましょう。

環境マネジメントシステムとは?

環境マネジメントシステム(EMS)とは、組織が事業運営において自主的に環境保全に関する活動を進めるに当たり、環境に関する方針・目標を自ら設定し、達成に向けて取り組むための自社の体制や仕組みを指します。国内においては国際規格であるISO14000シリーズが最も一般的ですが、エコアクション21やエコステージ等のその他の環境マネジメントシステムも存在します。

ISO14000シリーズは、環境マネジメントシステムを中心として、環境監査、環境パフォーマンス評価、環境ラベル、ライフサイクルアセスメントなど、環境マネジメントを支援する様々な手法に関する規格から構成され、この中で中心となるのが、環境マネジメントシステムの仕様を定めていISO14001です。

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ISO審査員の働き方

ISO審査員資格にはいろいろな種類があり、審査員の仕事をするのであれば審査員資格以上でなければ対外的な評価や仕事の受注には繋がりません。※審査自体は審査員登録機関に認められていれば主任でも審査員補でも同様に実施できます。

多くの審査員が審査機関に所属あるいは業務委託契約を行って、依頼を受けた企業に出向き、担当者に対して数日に渡り審査を行っていきます。その後、報告書を作成し、審査の合否を報告します。機械的な審査ではなく業務実態を理解したうえでの報告やコミュニケーションが求められます。

ISO審査の仕事はかつて、メーカー技術者のセカンドキャリアと言われ、独立も目指せるということでたくさんの人が高額な費用を投じて資格研修を受講していました。ただ、審査員としての働き口にありつけた人はごくわずかで、さらに近年では審査件数は減少しています。ピーク時には一万人を超える資格者がいたようですが、ISOブームの2000年代を境に減少の一途を辿っています。一方で、そのあおりを受けて、現在は当時の審査員も高齢となり引退する方も増えているので、現役の審査員の数は足りなくなっています。若いうちにチャレンジしたり、複数のISO資格やその他の関連資格、語学力と組み合わせていくことで長期に渡り活躍できる力強い資格となっていくでしょう。

その他、資格を保有しながらメーカー(事業会社)側で勤務している方も少なくありません。とは言え、その場合有資格者に手当を出すことはほぼありません。理由は前述の通り、別に資格がなくてもISO事務局も内部監査もできてしまうからです。ISOに積極的であったり、特定のMission(海外子会社展開)などの会社であれば、資格手当というよりも業務による報酬や役職手当として支給される可能性の方が高いでしょう。審査会社やコンサルタント会社の場合は資格よりも実績です。外資系審査機関であれば、むしろ英語の方が期待されます。

ある審査機関の代表の話では、昔は審査員に通訳をつけたり、英語版レポート作成専任のスタッフの手配などもできたそうですが、コストカットの時代となり、『全て独力で対応できる審査員しか今は採用していない』ということでした。

冒頭に事業会社内での活用と外部支援者としての活用を述べましたが、共通することは、資格保有者の多くがメーカー(事業会社)で経験を積んでいる ということです。

審査やコンサルの顧客はメーカーです。そのため自分自身がメーカーで勤務し会社のシステムを理解していることは資格並みに大切な要素です。経験のないコンサルに現場(顧客)は耳を傾けることはありません。よって、将来的には審査やコンサルを目指している人はまずはメーカーで経験を積むと共に資格を目指すやり方が良いでしょう。

審査員はたいていが50~60歳、もしくはそれ以上のベテラン層です。若い審査員はほとんどいません。審査業務自体がゼロになることはありませんのでピーク時と比べると競争にさらされることなく仕事が出来そうです。

また、最近では食品や情報セキュリティ関連のマネジメントシステムの業務も非常に盛り上がっています。ESG(環境・社会・ガバナンス)経営におけるガバナンス強化面でも情報セキュリティの貢献度は高く、この分野に関しては、社内担当者としても外部支援者としてもニーズが高い有望分野といえます。今時、国内だけで完結するようなISOは少なくなっています。監査も外国人が行ったり、現地の指導も英語で行ったりしますのでこの分野は資格並みに英語力も鍛えておく必要があります。

審査という業務に限らず、マネジメントシステムの知識を活かし、企業経営に貢献する社内(外)コンサルタントとしての働き方には今後も有望な資格と言えるでしょう。

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資格の取り方

ISO審査員になるためには、特定の登録機関(JRCAまたはIRCA)が承認した各マネジメントシステムの審査員研修を受講し、合格修了することが第一の関門となります。研修は5日間程度で、ISO規格の概要から実際の審査の手順、顧客への是正の仕方や報告書の作成方法などを徹底的に学びます。最終日には登録機関の試験を受験し、これに合格することが必須になります。研修コースの日程や詳細については、これらの研修コースを提供する会社のサイトなどをご確認ください。合格後、審査員登録機関に審査員として登録申請することで、ISO審査員として活動ができるようになります。

ISO14001審査員について

環境マネジメントシステム審査員の評価登録を行っていた(現在は移管)産業環境管理協会の環境マネジメントシステム審査員資格基準では、審査員資格の中で初級の環境審査員補に求められる経験について、2年以上の環境分野の業務経験が必要であると定めています。このうち多くが環境分野の中でも理化学系、理工学系の技術的な知見が求められる業務、あるいは付随する業務であることから、社内における推進担当者として技術部門の人材が多く選出され、結果的に日本企業における技術部門のキャリアパスとして環境マネジメント業務が定着しています。

環境分野の業務経験として認められる項目一覧

審査対応には「環境側面」及び「環境影響」を特定し、適切な是正措置とその妥当性を評価(対応)するための技術的な知見や、当該領域の法規制等の技術部門での経験が活用される場面はあります。しかし、その本質は環境に関する技術的な対応ではなく、マネジメントシステムであり企業の経営です。環境の技術や特定領域の経験だけではなく、全社視点、グローバル視点がなければ、今の時代の『環境』を審査することはできなくなってしまいますので、あくまでも入口であり前提条件的な経験として認識頂くことをお勧めいたします。

ISO14001を学ぶ参考図書

資格取得のためには登録機関の研修を受けることが基本となりますので、そちらで提供される資料がベースとなりますが、審査員資格は目指さなくても、ISO14001というものが何なのか、社内推進担当者になる前、なった後に役立つという観点でお勧め書籍をご紹介しています。

まずは図解で概要を理解するための初級本として。Kindle版もあります!

定番の一冊。ISO担当者になったら持っておくべき本

サステナブル・環境の業界においての活躍

日本は世界トップレベルの資格取得国

ISO14001は、1996年の発行から、急速に認証件数を伸ばし、2009年の40,000件を境に減少傾向にはあるものの、現在も20,000件以上の認証件数を維持しています。

これは国別の認証件数としては中国に次いで世界第2位の数字であり、環境マネジメントシステムが日本において浸透していることを証明しています。急速な拡大の背景には、1992年の地球サミットで「環境と開発に関するリオ宣言」がなされ、世界的に環境問題への意識が高まり、これが一部制度的な圧力として働いた結果、ISO14001の加速度的な普及につながったと考えられています。

電機・電子業界の大手企業はかつて、ISO9001(品質マネジメントシステム)という別の企画の取得に出遅れたことで国際取引に影響が生じた苦い経験を持っていました。そのため、欧州企業との取引には同じようにISO14001も必要になると予測し、2000年以降ISO14001の取得が加速したと言われています。

また、過去の公害問題を背景にした反省から、企業の環境への対応に厳しい視点が注がれていた状況を考慮すれば自然な流れであったと言えます。環境マネジメントシステムを導入するため、環境マネジメント要員を中心に組織的な取り組みが企業内で実施され、ISO14001取得件数と比例するように審査員資格取得件数も急激に伸びていきました。

EMS(環境マネジメントシステム)審査員産業分野別登録状況(2019年8月30日時点)
EMS(環境マネジメントシステム)審査員産業分野別登録状況(2019年8月30日時点)

その後、ISOはメーカーだけでなくその他のサービス業や大学などの組織にまで広がっていきました。学生の場合は、キャンパス内にゴミの分別方法などの張り紙が掲示されているのを見たことがあるでしょう。現在はSDGsなどが注目されていますが、環境意識としての基本中の基本とも言える紙・ゴミ・電気への意識が変わったの功績は、ISO14001にはあると言えます。

一方で、最近ではこの環境マネジメントシステムを返上する動きが出てきています。規格は審査する側が存在して成り立ちますが、この審査は更新制で、その度に相応のコスト(規模によるが100万円以上)がかかります。そのため、一時はブームに乗って取得したものの内部でシステムをうまく活用できていない組織は結果的に返上、あるいは国内の独自規格であるエコアクション21やエコステージと言ったコンパクトな資格に変更、あるいは自分たちで自主的なルールを設定し取り組んでいるというケースも最近では少なくありません。

メーカーなどではサプライチェーンの都合上、なかなかそのような対応はできませんが、ISO14001の重要度は別の意味で低くなってきています。

かつてはISO14001を取得していれば環境に対する配慮がなされている先進的な企業と一定の評価を得られましたが最近ではその他にも様々な観点で環境への取り組みが評価されます。例えば、appleはその厳しさで有名ですがサプライヤーに対し、再生可能エネルギーの導入を義務付けています。最近では義務付けるだけでなく、サプライヤー向けの支援も話題になっています。

このルールに応じることのできない企業はapple社の取引(サプライチェーン)から外されることとなり、経営にとって大きな痛手となります。結果的にメーカーは環境への取り組みを強化していくことになります。

この流れはappleに限らず海外有名企業の多くがサプライチェーンを巻き込んだ環境への取り組みを強化しています。その他にも現在はESG(環境・社会・ガバナンス)経営の指標が数多くあり、企業は取引機会を確保・拡大するためには気候変動対策や再エネ導入率の向上など、様々な努力をする必要がありISO14001を取得しているだけでは対外的な効果は弱まっていると言えます。

ISO14001以外の環境規格、ISO26000の登場も大きな影響を与えています。

ISO26000とは、2010 年に発行された組織の社会的責任に関するISO規格であり、認証ではなくガイダンス規格(取得義務じゃない)である点がISO14001とは大きく異なります。

ISO26000では、組織が取り組むべき社会的責任の中核主題を

  • 企業統治
  • 人権
  • 労働慣行
  • 環境
  • 公正な事業慣行
  • 消費者課題
  • コミュニティへの参画及びコミュニティの発展

以上の7つとしており、ISO26000に取り組むことで、E(環境)以外のS(社会)とG(ガバナンス)分野の経験知を獲得することが可能となっています。

その他にもエネルギーに関するマネジメント規格であるISO50001があります。ISO 50001はエネルギーパフォーマンスの改善に焦点が当てられ、ISO 14001の要求事項を基礎として、エネルギーパフォーマンスの把握と改善に関する具体的な要求事項が盛り込まれています。サステイナブル経営やESGが重視される時代となり、ISO14001だけで環境をアピールできる時代は終わりました。最近ではSの部分に相当するISO30414(人的資本)が新しいブームとなっています。とは言え、ISO14001がなくなるということは有りませんし、何が主流化と言えば審査件数の数からもまだまだ圧倒的にISO14001が多いですので、ここを基本にしながらその他の規格に経験を広げていくキャリア戦略は大いに有りではないでしょうか。また、環境に関する法律、規制、規格は国内のローカルなものだけ相手にしていては今後は立ち行かなくなります。ISOをきっかけに国際規格を理解していくことで海外も含めたビジネスの実態を見ることができます。

あおみ
あおみ

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